white veill 3
次の日出勤すると、聖に紙袋を渡された。
「なに、これ?」
「志摩子から預かっていたの。 あのこ、開店前にわざわざ来てさ」
「私に?」
「だから差し出してんでしょーが」
なんだろう。
志摩子が私に?
まったく見当がつかない。
とりあえず、中を見てみると…。
「…………」
シンプルな、アイボリーのマフラー。
「おやおや」
「なによ?」
「いえいえ」
私は、昨日の会話を思い出した。
江利子さん、その格好でここまで来られたのですか?
え? そうだけど
寒く、ないですか?
あぁ…。 奥に仕舞ってあるコート、出すのが面倒なのよね
そんな…風邪を引いてしまいます
本当に、あのこは…。
「なにさ〜、マフラー見つめて黙っちゃって。 え? 手編みじゃなくて残念だ? 贅沢言うなよぉ」
「だれもそんなこと言っていないでしょう?」
「あはは。 冗談です。 笑顔でそんな低い声ださないで」
とりあえず、今から仕事なのでマフラーを紙袋に戻そうとすると、底にあったカードを見つけた。
そこには、規則正しい文字で、
『風邪をひかないように、お仕事がんばってください』
「江利子ったら、愛されてるね!」
何時の間にか聖が私の真後ろに回りこんで、カードを覗き見していた。
「ちょっと! 勝手に見ないでくれる」
私は、ついその顔面を叩いてしまった。
当たり所が良かったらしくて、聖はしばらくその場で蹲っていたけれど。
自業自得よ。
『white veill』 3話 終わり
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