white veill



 次の日出勤すると、聖に紙袋を渡された。


 「なに、これ?」
 「志摩子から預かっていたの。 あのこ、開店前にわざわざ来てさ」
 「私に?」
 「だから差し出してんでしょーが」



 なんだろう。
 志摩子が私に?


 まったく見当がつかない。


 とりあえず、中を見てみると…。



 「…………」


 シンプルな、アイボリーのマフラー。


 「おやおや」
 「なによ?」
 「いえいえ」



 私は、昨日の会話を思い出した。




   江利子さん、その格好でここまで来られたのですか?

   え? そうだけど

   寒く、ないですか?

   あぁ…。 奥に仕舞ってあるコート、出すのが面倒なのよね

   そんな…風邪を引いてしまいます




 本当に、あのこは…。


 「なにさ〜、マフラー見つめて黙っちゃって。 え? 手編みじゃなくて残念だ? 贅沢言うなよぉ」
 「だれもそんなこと言っていないでしょう?」
 「あはは。 冗談です。 笑顔でそんな低い声ださないで」



 とりあえず、今から仕事なのでマフラーを紙袋に戻そうとすると、底にあったカードを見つけた。

 そこには、規則正しい文字で、



   『風邪をひかないように、お仕事がんばってください』



 「江利子ったら、愛されてるね!」


 何時の間にか聖が私の真後ろに回りこんで、カードを覗き見していた。


 「ちょっと! 勝手に見ないでくれる」


 私は、ついその顔面を叩いてしまった。


 当たり所が良かったらしくて、聖はしばらくその場で蹲っていたけれど。

 自業自得よ。





『white veill』 3話 終わり




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