私を、呼ぶ声が聞こえる。



   澪。


 誰?


     澪。



 私はこの声を知っている。

 そうだ、この声は。



   澪。



 お姉ちゃん。



 会いたかった。

 ずっと、ずっと。
 会いたかった。




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 雨の音で目が覚める。

 明るい夕焼けの中の強い雨。
 夕立だ。


 夢を見ていた気がする。
 優しくて、嬉しくて、温かい夢。



 「澪」


 急に呼ばれて、ドキっとした。
 声の方を振り向くと、姉がいる。

 とても穏やかな笑顔で。
 それは、実の妹の私でも見とれてしまうような……。


 なんだか恥ずかしくなって、うつむく。


 「?」


 すると、自分に薄手の毛布が掛かっていたことに気付いた。


 「あぁ。いくら夏でも、ソファでそのまま寝てたらカゼ引いちゃうと思って」
 「あ、ありがと…」
 「でも澪ったら、なんだかすごく幸せそうな顔で寝てたよ?」


 私が体を起こすと、お姉ちゃんが隣に座りながらそう言った。


 「えぇ!? や、やめてよ、恥ずかしいなぁ…」


 私はちょっと顔を背けて、怒ったフリをする。

 そしたらお姉ちゃんは、私の髪についた癖を指で梳きながら、いたずらっぽくゴメンね、と言ってまた笑った。


 「澪」
 「…なに?」
 「おはよう」


 そういえば、まだ言ってなかった。


 「あ、うん。おはよう、お姉ちゃん」



 思い出した。
 私は、お姉ちゃんの夢を見ていたんだ。


 大好きなお姉ちゃん。

 夢でも逢えて、良かった。







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